静岡県立朝霧野外活動センター
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ティッシュとレジ袋



先日、電車に乗っているときのことだ。背後で人気がサッと散った気配を感じた。後ろを振り向くと、座席に座った若い娘さんが血の気の失せた顔をして口を押さえているところだった。席の下には吐瀉物があった。彼女は自分の足下の物を必死に何とかしようとしているのだが、気分が悪い上に拭くものもない様子だ。困り果てて右往左往しているというのが良く分かった。そして、隣に座っていた50代とおぼしき婦人が自分のバッグからティッシュペーパーを取り出して加勢をはじめたところだった。それにつられるように、近くにいた人たちがそれぞれティッシュペーパーを提供し始めた。中にはコンビニ等でくれるレジ袋を持っている人がいて、拭き取ったものはこの中に入れなさいよと渡したので、吐瀉物処理の速度は飛躍的に加速した。私もその仲間に入りたかったが、ティッシュペーパーというものを持つ習慣のない私は差し出すものがなかった。
私がティッシュペーパーを持たないことの説明は次の機会に譲る事にして、電車の中でのハプニングは数分で収まりが付き、娘さんは周りの人々にお礼を言って次の駅で降りていった。
咄嗟のこととは言いながら、周囲の人々の対応は見事だった。とかく、現代人は冷淡であるとか、無関心であるとか言われるが、いざとなったら結構やるのである。
ただ、こういう時にはみんなあまり声を発しないものなのだ。阿吽の呼吸というやつがその周辺の空気を支配する。無言のやり取りでモノは粛々と片付けられていった。
傍観者然としてその場に立ちすくんでいた自分が情けなかったが、その日は何だか好い気分の一日だった。

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