その1 「原生林」
人には、それぞれ、とっておきのお気に入りの場所というのがあるのではないでしょうか。この写真に写っているところもそんな場所の一つで、私が大好きな所です。富士山の二合目から三合目あたりにかけての原生林の中なのですが、朝霧で行う長期キャンプの終盤にこどもたちと一緒にキャンプ場から片道10キロ以上の道のりを歩いて野宿に行く途中ここを通ります。下見の時などは、ここで、野生の鹿の群れに出会ったりもしたこともありました。
原生林とか広葉樹の森というのは不思議と人のこころばかりか、疲れた体をも癒す効果があるようです。ここまでくると野宿のポイントももうすぐそこで、スタッフも子どもたちもホット一息つく地点です。すごく苦しかったり、つらかったり、楽しかったりといった感情体験をともなった場所というのは、生涯記憶の中に生き続けるようですし、第二のこころのふるさとなどと呼ばれることになったりします。
そういえば、富士山を世界文化遺産にしようという動きがあるようです。文化という言葉にはもともと、人々の精神作用の結果生まれ出てきたものといった意味もありますから、そういう意味では、富士山は日本人のこころや精神作用の象徴のような山でもあります。
こどもたちには、野宿体験の記憶とともに、このような富士の原生林の様子が記憶に残り、将来富士山はもとより、日本の山や川、日本的な風土や文化に愛着を持ってくれればと願っています。
(07.04)